本研究では、CaM結合ドメインを持つCキナーゼ基質タンパク質としてMARCKS、NAP-22、eNOSをとりあげ、Cキナーゼ、CaM、酸性リン脂質との相互作用やこれらの因子による機能制御を生化学的手法ならびに構造生物学的の両面から解明する。 これまでMARCKSやNAP-22について、CaMとの結合様式がこれまでのCaM結合タンパク質とは構造的に異なっていることを明らかにしてきたので、このことを分子レベルで明らかにするために、CaMとこれらタンパク質のCaM結合ドメインペプチドとの複合体の立体構造をX線結晶構造解析を行っている。 本年度の成果として昨年に構造解析に成功したNAP-22のCaM結合領域であるN末端のミリスチル化ドメインとCaMとの複合体の構造の精密化を行った。その結果、興味深いことに、ミリスチル基がCaMのN末、C末ドメインから形成される疎水性のトンネルの中をまっすぐに貫通しており、主に疎水性相互作用で蛋白質間の認識を行っていた。この結果は直接ミリスチル基が蛋白質間相互作用に関与していることを示した最初の例である。今後この構造結果を基により詳細な相互作用実験を行う予定である。 また、現在、他のCキナーゼ基質タンパク質であるMARCKSやeNOSのCaM結合ドメインについても同様に結晶化実験を開始し、良好な結晶を得ることに成功している。
|