研究概要 |
RecA蛋白質とその類似蛋白質はウイルスからヒトまで共通に保存されており,遺伝的組換え反応において中心的役割を果たす。しかし,その分子レベルでの組換え反応機構は明らかでない部分が多い。その最も大きな原因は,組換え反応に直接関与するDNA結合部位が未だに決定されていないことである。本研究ではこれら課題の解決を試みている。 本年度は以下の2点を中心に行った。 (1)高度好熱菌RecA蛋白質を用いたRecA蛋白質・DNA複合体のX線結晶構造解析 私は,構造的に安定なため結晶化に有利と考えられる高度好熱菌RecA蛋白質を用いて結晶化を行うことにした。そこで,まず高度好熱菌RecA蛋白質の大量調製系を確立した。そして,高度好熱菌RecA蛋白質単体の結晶を得ることに成功し,その格子常数等を決定した。さらに,より上質のデータが得られる低温条件下でのX線回折実験を行うための,抗凍結剤の条件を検討した。また,RecA蛋白質・DNAの複合体,RecA蛋白質・DNA・ATPアナログの複合体の結晶化条件の検索も同時に行っている。 (2)単量体化したRecA蛋白質を用いたNMR測定 私はカオトロピックイオンを用いることや遺伝的変異を加えることにより,幾つかの方法で高度好熱菌RecA蛋白質を単量体化することに成功した。この単量体状態を利用することによりRecA蛋白質のNMR測定が可能になった。また,同時にRecA蛋白質の中央ドメイン,N末端ドメインのみの大量調製系をそれぞれ確立した。現在,^<15>Nで安定同位体標識されたRecA蛋白質の中央ドメイン,N末端ドメインを調製し,そのNMR測定データを収集している。
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