昼間視と薄明視を担う二種類の視細胞、錐体と桿体の光受容蛋白質の機能的性質(メタII中間体の寿命、再生速度)の違いが視細胞の応答特性にどのように寄与しているか検討するため、錐体と桿体の光受容蛋白質の機能的性質(メタII中間体の寿命、再生速度)を決定している部位(E122)を改変した変異ロドプシンを持つマウスを作製した。マウス視細胞を用いた分光学的、生理学的実験から、以下の知見が得られた。 (1)マウス視細胞円盤膜試料を用いて中間体の挙動を観察する分光測定系を確立し、野生型と変異型ロドプシンの挙動を観測した。その結果、メタII中間体の寿命は変異型が野生型より10倍以上短いことが確認できた。また、メタII中間体の不安定化に伴い、その前駆体であるメタI中間体との間の平衡もメタI側にシフトした。 (2)退色したマウス視細胞円盤膜試料を用いてロドプシンの再生速度を検討した結果、変異ロドプシンの再生速度は約5倍野生型よりも速いことがわかった。この速度の違いは界面活性剤で可溶化した試料を用いた場合と若干異なることから、脂質環境の違いが再生速度に影響を与えることが示唆された。 (3)電気生理学的実験の結果、変異ロドプシンを含むマウス視細胞は、アクションスペクトルが約20nm短波長シフトしていることがわかった。この結果は、El22Q変異ロドプシンが約20mm短波長シフトした吸収特性を示すことと対応する。また、光感受性が約3倍低下することがわかった。この結果は(1)で起こったメタIIの不安定化と関係があることが示唆される。
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