研究概要 |
微小重力環境においては、どの生物もその後生過程にストレスを被ることが知られています。確率的に破綻を伴う(シュレーディンガーの猫的)状況に多世代おかれた結果としてその体制に現れる(ことが期待される)形質について数理モデルを用いて調べました。 遺伝的アルゴリズムに代表される確率的最適化技法によってシステムを構成しようというアプローチは、発生現象のように、システムの構成要素がある程度明らかになり、しかも入出力の制約を満たす解がパレト解(ある保存量が一定値をとる面)上に分布しているような対象をモデル化する際に有用である。実働時の因果関係や、相互作用を再現することによって、対象の持つ性質・特性の明快な理解が可能になる。この技法をその後生過程に「かなりたくさんのvulnerableな箇所」を持つ「脊椎動物」に適用した。その体制構築、細胞間情報伝達、蛋白間相互作用のaffinityなどの柔軟な制御の総合を,可変な結合を持つネットワークで表し、胚の球面極座標表示を、中心力の場における角運動量とエネルギーに対応する二つの保存量を定義することにより、実装する。この時かかわる二体間相互作用には「場」と「行為者」という非対称性が伴い、細胞集団として「一定値をとる保存量がどちらに片寄って現れるかは分からない」という意味で観測における不確定性が期待され、遺伝子ネットワークの問題を、各個体内で定義した相互作用の枠組みの上で、集団の存続をその生活史に則った階層的淘汰過程によってモデリングし、追跡を行ったとき、観測される傾向(predisposition)として定式化することによりこれに事後確率としての予測を与えることができます。 保存量1:異時性Heterochrony 胚の運命決定点は空間において位置情報の連続性を保ちつつ十分な機能的複雑さを実現するように分布する。 保存量2:多様性Diversity 胚の獲得免疫系は抗原の圧倒的な多様性に逆接続を行い、自己非自己を適切に見極めるように構築される。 球面極座標表示: 余緯度:誘導と細胞自律性(神経堤細胞と神経軸-頭部と体幹) 方位角:細胞間交信におけるリガンドと受容体(サイトカインと増殖因子) 動径方向:免疫の細胞間相互作用(獲得性免疫の構造、再構築) 遺伝子治療における免疫療法の設計などを目的に哺乳類免疫系の局所的な細胞分化経路、細胞表面抗原集合を操作する際に、必要とされる膨大な知識を対話的な3次元世界構築によって裏打つための統合環境を実現する指針を得られた球面極座標表示は与えます。
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