塩酸グァニジンによる変性実験とペプチダーゼを用いた限定分解実験から、MutS蛋白質は少なくとも3つの構造ドメインからなると推定され、それらの構造ドメインの機能を解析するために、それぞれに対応する3つの断片化遺伝子を作成し、その大量発現と精製を行った。得られた断片化蛋白質の溶液中での分子量・ATP加水分解活性・DNA結合能等について検討した結果、中央部とC末端ドメインが多量体形成能・DNAへの結合能・ATP加水分解活性などのMutS蛋白質の機能の多くを有していることが明らかになった。また、ヌクレオチド結合とDNA結合の間に密接な関連があることも示された。他のグループによって報告されたX線結晶構造もその関係をよく説明するが、結晶構造では止まった一つの状態を反映しているに過ぎない。そこで、溶液中でのMutS蛋白質のコンフォメーションをX線小角散乱を用いて測定した。その結果、MutSはアデニンヌクレオチド非存在下・ADP存在下・ATP存在下で3つの異なる溶液構造を取っていることを明らかにした。ATP結合モチーフの変異蛋白質を新たに作成したところ、これではヌクレオチドによる構造変化が観察されなかったことから、MutSの機能にはヌクレオチドの結合に伴う構造変化が重要な役割を果たしていることを示した。
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