研究概要 |
有性生殖生物において、相同組換えはDNA切断を修復し遺伝情報を正確に伝える機能をもっている。さらに、減数分裂期には相同組換えは遺伝的に多様な配偶子を形成するという重要な役割を担っている。このように相同なDNAの配列を認識し、組換えを触媒するタンパクとして大腸菌相同組換え遺伝子RecAが知られている。我々は、哺乳動物のRecA遺伝子のホモログであるDmc1遺伝子のターゲッティングから、Dmc1遺伝子が減数分裂期の相同染色体の対合に必要で、その欠損は減数分裂の停止とアポトーシスを導くことを明らかにした(Mol. Cell 1,707-718,1998)。このように、高等真核生物において組換え遺伝子は、DNA修復や染色体の対合、組換えに必須であるだけでなく、細胞周期の調節と深く関わっていることを明らかにした。さらに精巣のタンパクを用いて、免疫沈降したところ、抗DMC1抗体によってp53タンパクが、また抗p53抗体によってDMC1タンパクが共沈することを明らかにした。そこで、Dmc1遺伝子とp53遺伝子のダブルノックアウトのマウスを作製し、減数分裂における細胞周期の停止とアポトーシスがp53遺伝子の欠損により、チェックポイント機能が作用せず遅延するか検討した。その結果、p53遺伝子の有無に係わらず、Dmc1欠損に伴う減数分裂の停止とアポトーシスは、起こり両者で差がないことが明らかとなった。このことから、相同染色体の対合不全に伴うアポトーシスがp53遺伝子の経路を介さず、新たな経路があることを明らかにした。
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