我々のグループは出芽酵母のDpb11と遺伝学的に相互作用する複数のSld因子を同定している。Dpb11は染色体DNA複製開始の際に、DNAポリメラーゼを複製開始領域にローディングする機能をもつ。現在までの解析から、Sld2、3、4についてもDpb11と密接に関係し、染色体DNA複製に機能することを明らかにしてきた。今年度は、新規の遺伝子である、SLD5の解析を行った。SLD5と遺伝学的に相互作用する因子として、PSF1、2を同定した。Psf1の免疫沈降実験から、これら三者は複合体を形成していた。また、この複合体は細胞周期を通じて安定に存在した。更に、sld5の温度感受性変異では、この複合体の安定性が低下しており、Sld5-Psf1-Psf2の複合体形成がこれらの機能にとって重要であることが示唆された。SLD5、PSF1の温度感受性変異株を用いた解析から、これらの因子が染色体DNA複製に関与していることが示された。染色体DNA複製の反応を大別すると、開始反応と伸長反応に分けられる。開始反応については、Cdc45とクロマチンDNAの結合によって検定できる。psf1-1細胞を非許容温度すると、このCdc45の結合がおこっておらず、少なくとも、この因子が複製開始反応に関与していることが示唆された。更に、Psf1と複製開始領域との結合を調べた結果、この因子はDpb11やPo12同様G1/S期に結合がみられた。Psf1とDpb11の複製開始領域の結合は相互の機能に依存していた。これらの、結果から、Sld5-Psf1-Psf2複合体はG1/S期に、Dpb11と相互作用することで、DNAポリメラーゼεの複製開始点へのローディングを実現するものと予想された。
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