申請者は、繊毛虫Tetrahymenaの細胞骨格タンパク質の1つである14nm繊維タンパク質(14FP)にATP依存的に結合する因子として、Tetrahymena hsp60(以下Thsp60)を同定した。Thsp60は、その分子量が65kDa、等電点は6.2であり、抗ヒトhsp60モノクローナル抗体(LK-2)によって特異的に認識された。LK-2を用いた蛍光抗体法および免疫電子顕微鏡法によって、Thsp60はミトコンドリアに局在することがわかった。驚くべきことに、Thsp60はミトコンドリアだけでなく繊毛の基底小体や口部装置(基底小体から構成されるオルガネラ)にも局在することが明らかになった。Thsp60は、細胞をNP-40処理した細胞骨格モデルにおいてもの基底小体に局在したことから、Thsp60が基底小体において細胞骨格成分の1つとして存在する可能性が示唆された。さらにThsp60の口部装置への局在は、細胞分裂時あるいは有性生殖時の形成過程にある口部装置において特に顕著であった。これらの結果は、Thsp60がミトコンドリアにおいてタンパク質のフォールディングに関わると同時に、基底小体のようなミトコンドリア以外の細胞内にも局在し、口部装置のような表層構造のパターン形成に関わる可能性を示唆している。現在、Thsp60遺伝子のクローニングを行っており、同定された遺伝子をもとにThsp60のノックアウト株を作成し、その表現形の解析から基底小体におけるThsp60の機能を明らかにしたいと考えている。
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