本研究は薬剤が特定の細胞骨格の変化を誘発する例があること、温度感受性培養細胞でも構造の制御が可能である事に着目し、これら細胞の抽出液をFアクチンカラム法(*)で解析し、構造変化に連動してアクチンに対する活性の変動するタンパク質を検索する事を目的としている。 *Fアクチンをリガンドとするアフィニティカラム法で、細胞や組織の抽出液から直接アクチン結合タンパク質を回収し、抗体作成・アミノ酸解析・リン酸化状態の解析などに用いる。 まず、アクチン結合タンパク質を多く含むニワトリ砂嚢平滑筋で条件を検討し、既知のアクチン結合タンパク質だけでなく、アクチンとの関連が推定されていた新規タンパク質も結合する事を明らかとした。また、tropomyosinでカラムをあらかじめ飽和させると、抽出液の状態でもtropomyosinとのアクチン結合に関する競合を推定出来る事が分かった。 次に培養細胞の条件に近づけるために、非筋組織由来である脳サンプルを解析した。既知のアクチン結合タンパク質の抗体に反応しないバンドのアミノ酸解析を試みたところ、近年シグナルと細胞骨格の橋渡し役とされているArp2/3complexのニワトリホモログの他にホモロジーの無い配列もいくつか同定された。 さらに細胞周期が同調出来るマウス由来の温度感受性培養細胞tsFT210株の解析に進み、既知のアクチン結合タンパク質が結合する事がイムノブロットで確認出来た。さらに多くのタンパク質が溶出画分に見られたが、気相シークエンサーでの検出限界である事が明らかとなったので、現在は質量分析計を用いた解析に切り替えている。 今後は条件の検討をしながら、細胞周期を同調させた細胞や抗生物質で処理した細胞を解析したい。特に新規タンパク質と思われるものは抗体作製、アミノ酸配列解析、およびcDNAクローニングを進める予定である。
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