研究概要 |
クラミドモナスには保守的配列のアクチンと、極めてdivergentな配列のNAPの2種のアクチン遺伝子が存在し、互いに異なる発現制御を受けている。両者の機能的差異と相関を理解することが重要と考えられるが、NAP独自の機能やその起源は謎である。今年度は昨年に引き続き、キメラ遺伝子による両者の人為的発現制御の効果を検討するとともに、オオヒゲマワリ目におけるNAPホモログを同定し、分子系統的解析を行った。 1.キメラ遺伝子の導入によるNAP・アクチンの人為的発現制御 翻訳開始点(ATG)を境に、NAPの上流領域(発現制御領域)とアクチンのタンパク質コード領域をつなげたキメラ遺伝子(pNAPΔpA7)、およびアクチンの上流領域とNAPのコード領域をつなげた遺伝子(pA7ΔpNAP)をそれぞれ作成し、アクチン欠損株に導入した。前者導入株では鞭毛形成能が低下した。一方、後者導入株では顕著な鞭毛形成活性を示した。また、前者導入株をさらにmutagenizeした株ではNAPの発現量が極端に低下し、鞭毛形成能も元株よりさらに低下した。以上から、NAPがタンパク量依存的に、あるいはup-regulationに伴って鞭毛形成に関与する可能性が示唆された。以上は日本細胞生物学会第54回大会にて発表した。 2.オオヒゲマワリ目におけるアクチンファミリーの存在様式とNAPの起源 C. moewusii,とV. carteriについて、NAPホモログを同定した。前者については未同定だったアクチンホモログも同定した。分子系統解析の結果、NAPと2種のNAPホモログがアクチンとは起源を異にする、新グループを形成することが判った。V. carterのNAPはC. reinhardtiiのNAPと高い相同性を示し、両種がきわめて近縁であるとする説を支持した。以上は米国細胞生物学会第41回年会にて発表した。
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