研究概要 |
ドリコールは小胞体における糖鎖修飾の際に脂質キャリアとして用いられるポリプレノール類であるが,その生合成系の酵素の多くは未同定であった.代表者らは,一群の小胞体タンパク質の正しい局在化に異常を示す出芽酵母変異株の原因遺伝子の一つRER2が,ドリコール合成系の鍵酵素,cis-prenyltfransferaseをコードすることを見出していた.さらに,rer2変異株の多コピーサプレッサーとして同定したSRT1遺伝子は,RER2と相同なタンパク質をコードし,その過剰発現はrer2破壊株のcis-prenyltransferaseの低下を部分的に回復させることから,それぞれが酵素活性を有すると結論した.一方,それぞれの酵素で産物の鎖長が異なること,発現のピークがRER2では対数増殖期,SRT1では定常期であることなどから,2つの酵素に何らかの機能分担がある可能性が考えられた.HA-tagを付加して間接蛍光抗体法により細胞内局在を観察したところ,Rer2-3HApでは小胞体に近接するドット状の構造が,Srt1-3HApでは定常期において発達してくるlipid particle(LP)に特徴的なリング状の構造が染色された.Srt1-3HApと,酵母のLPマーカーであるErg6pとの二重染色を行った結果,2つの染色像がほぼ一致した.LPは細胞内の膜成分のホメオスタシス維持や脂質の輸送に関わると考えられてはいるが,実際の機能はよくわかっていない.当研究の結果は,LPがドリコール合成の場の一つでもあることを示しており,LPが多様な機能を担っていることを示唆している.
|