両生類卵の受精におけるチロシンキナーゼ-カルシウムシグナリング経路の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12780556
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 佐藤 賢一 神戸大学, 遺伝子実験施設, 助手 (30235337)
• キーワード: 受精 / 卵活性化 / 蛋白質チロシンリン酸化 / シグナル伝達 / Xenopus / Src / Shc / ホスホリパーゼCγ

研究概要

本研究では、「ゼノパス卵の受精成立において、Src型チロシンキナーゼ(Xyk)がカルシウム経路誘導の上流因子として機能する」という仮説の検証を2年計画で行う。今年度は、Xyk活性化因子及び標的因子の同定に関して以下の成果を得た。
1 Xyk活性化因子の同定:私達は動物培養細胞系を用いた関連研究から、ShcがSrc活性化因子であることを見いだした(Genes Cells、2000)。そこで、ゼノパスShcの機能解析を目的として、その分子クローニングを行った。ゼノパス肝臓cDNAを鋳型にした遺伝子増幅によりShc遺伝子(xshc)断片を単離し、RACE法によりxshcの全一次構造を解析した。xshcは463アミノ酸をコードし、ヒトshcと約77%のアミノ酸相同性を示し、p52、p46分子種を発現しうる構造を有した。今後はゼノパスShcの分子種特異的な機能に焦点をあてて研究を継続する。
2 Xyk標的因子の同定:ホスホリパーゼCγ(PLCγ)のチロシンリン酸化及びXykとの物理的な相互作用が受精後1〜2分で起こることを見いだした。また、Xyk阻害剤PP2やPLC阻害剤U-73122を微量注入された卵は、受精によるイノシトール3リン酸産生、細胞内カルシウム濃度上昇、表層収縮、受精膜形成などの卵活性化反応を起こすことが出来なくなった。この結果は、Xyk→PLCγ経路が受精時のカルシウム誘導/卵活性化の必要因子であることを示している(Dev.Biol.、2000)。さらにXyk以下の卵活性化シグナル伝達が過酸化水素刺激卵で再構成されることも見いだした(Dev.Growth Differ.、2001)。
2年目は当初計画の後半部分(Xykの分子生物学的解析と受精依存的チロシンリン酸化の可視化)に加えて、受精のより早い段階/卵細胞膜上の受精の場の生化学的解析に着手したい。

研究成果

• [文献書誌] Sato,K.-I.: "Adaptor protein Shc undergoes translocation and mediates up-regulation of the tyrosine kinase c-Src in EGF-stimulated A431 cells."Genes Cells. 5. 749-764 (2000)
• [文献書誌] Sato,K.-I.: "Tyrosine kinase-dependent activation of phospholipase Cγis required for calcium transient in Xenopus egg fertilization."Dev.Biol.. 224. 453-469 (2000)
• [文献書誌] Sato,K.-I.: "Fertilization signalling and protein-tyrosine kinases."Comp.Biochem.Physiol.B Biochem.Mol.Biol.. 126. 129-148 (2000)
• [文献書誌] Sato,K.-I.: "Regulation of Xenopus oocyte maturation, egg fertilization and embryogenesis by protein-tyrosine phosphorylation."Curr.Top.Biochem.Res.. 2. 91-102 (2000)
• [文献書誌] Sato,K.-I.: "Hydrogen peroxide induces Src family tyrosine kinase-dependent activation of Xenopus eggs."Dev.Growth Differ.. 43. 55-72 (2001)
• [文献書誌] Tokmakov,A.A.: "Calcium oscillations in Xenopus egg cycling extracts."J.Cell.Biochem.. (印刷中).