研究概要 |
ショウジョウバエやツメガエルでは、卵内で局在する母性RNAが体軸形成や生殖細胞形成などに不可欠な役割を担っている。しかし、両生類以外の脊椎動物種では局在化母性RNAは見つかっていなかった。我々は、ゼブラフィッシュにおいて、特徴的な局在性を示す母性mRNAをいくつか同定している。すなわち、RNA結合性蛋白質をコードするdazl,brulの母性mRNAは卵母細胞や受精卵の植物極に局在化し、卵割期に動物極へ移動する。また、生殖系列に発現するvasa遺伝子の場合、母性mRNAは2,4細胞期の卵割溝の両端に局在する。本研究では、ゼブラフィッシュにおける母性mRNAの局在化機構について検討を行い、以下の知見を得た。 1.ゼブラフィッシュの高温感受性janus変異胚において、vasa母性mRNAの局在化が異常となることを見いだした。janus変異胚では2細胞期の割球間接着性が低下していることから、細胞間接着装置や細胞骨格系とvasaの局在化が密接な関係にあると考えられる。 2.dazlとbrulは、卵母細胞植物極への局在化様式が異なることを明らかにした。特にdazlの局在は卵形成過程の非常に初期に起こることから、卵母細胞の動物極・植物極形成への関与が示唆された。また、植物極皮質へのアンカーにはアクチン繊維が必須なことがわかった。 3.卵成熟過程に関与するc-mos mRNAが卵母細胞動物極に局在化することを見いだした。
|