FTD-K(イントロン+12変異のFTDP-17)1例、皮質基底核変性症(CBD)3例、進行性核上性麻痺(PSP)3例、ピック病(PiD)3例、神経原線維変化型痴呆(SDT)2例、argyrophilic grain disease(AGD)2例、アルツハイマー病(AD)3例、正常対照例3例を対象とした。これらの疾患の凍結脳より抽出したサルコシル不溶性タウを脱リン酸化し、6種類のアイソフォームを含むリコンビナントタウとともにSDS電気泳動後、リン酸化非依存性抗タウ抗体を用いてイムノブロットを行い、そのアイソフォーム組成を同定した。同時に、これらの生化学的解析に用いた凍結脳組織の隣接部位を切り出して解凍した小ブロックを70%エタノール固定後、凍結マイクロトームで30μm厚の浮遊切片を作成し、当施設で作成した4リピートタウ特異抗体(Ex10)を用いた免疫組織化学染色を行い、神経細胞およびグリア細胞内に蓄積したタウのアイソフォームを確認した。FTD-K、CBD、PSPのサルコシル不溶性タウは4リピートタウのみで構成されていた。ピック病の不溶性タウは、3リピートタウと4リピートタウの両方を含むが、3リピートタウ優位であった。SDTとAGDの不溶性タウは、3リピートタウと4リピートタウをほぼ同じ割合で含み、ADと同様のパターンを示した。免疫染色では、CBDとPSPの全ての神経細胞およびグリア細胞内封入体が4リピートタウ陽性であった。ピック病では、アストロサイト内封入体が4リピートタウ陽性であったが、大部分のピック球とオリゴデンドロサイト内封入体は4リピートタウ陰性であった。以上から、神経細胞とオリゴデンドロサイトにおけるタウのアイソフォーム特異的蓄積過程は、CBD/PSPとピック病とでは異なっており、疾患特異的であることが示唆された。
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