皮質基底核変性症(CBD)3例、進行性核上性麻痺(PSP)3例、ピツク病(PiD)3例、神経原線維変化型痴呆(SDT)2例、argyrophilic grain disease(AGD)2例、アルツハイマー病(AD)3例、正常対照例3例を対象とした。これらの疾患の凍結悩より抽出した可溶性タウを脱リン酸化し、6種類のアイソフォームを含むリコンビナントタウとともにSDS電気泳動後、リン酸化非依存性抗タウ抗体を用いてイムノブロットを行い、そのアイソフォーム組成を同定した。その結果、検討した全ての疾患において、4リピートタウと3リピートタウの比はほぼ1:1であった。以上から、CBD、PSP、PiDにおいても各アイソフォームの発現レベルには異常がないことが示唆され、これらの疾患において不溶性タウのアイソフォーム組成に偏りが生じる機序についてはさらに検討を要することが明らかとなった。次に、AD、PiD、CBD、PSPの脳を各種の界面活性剤への可溶性で分画後、各画分について抗タウ抗体を用いてWestern blotを行い、各疾患脳に蓄積したタウの分解・修飾様式について比較検討した。その結果、蓄積タウのアイソフォーム組成が同一であるCBDとPSPにおいて、その主要なカルボキシル末端側断片の分子量が異なること、およびアミノ末端側が切断されたタウで構成されるスメアタウの量が異なることが判明し、両疾患間において蓄積タウの分解・修飾様式に違いがあることが判明した。さらに、ADとPiDに比べ、CBDとPSPでは、蓄積タウの分解・修飾が進行していないことが明らかとなった。以上から、蓄積タウの分解・修飾様式の違いが、各タウオパチーに疾患特異的な病理像形成に関与していることが示唆され、リン酸化部位の違いといったタウの分解・修飾様式に影響を及ぼす要因の検索が、各タウオパチーの病態解明に重要であると考えられた。
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