大脳皮質領野の形成・維持に関わる遺伝子は現在でも殆ど明らかになっていない。本研究では、遺伝子の発現解析のために最近国内で開発されたRLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法を足がかりとした、胎生期の大脳皮質領野形成に関わる遺伝子群の解析を行うことを目的としている。RLCS法はcDNAサブトラクション法やディファレンシャルディスプレイ法およびDNAマイクロアレイ法のような大規模な設備、費用を必要とせず、異なる条件下で得られたサンプルを詳細に解析することが出来る。本年度は、マウス胎仔期大脳皮質領野の前方-後方領域において異なる発現様式を示す遺伝子群のスクリーニングを行った。材料には胎生18日目のマウス胎仔を用い、大脳皮質を領域ごとに二分してそれぞれの組織からmRNAを抽出し、cDNAを合成した。さらに6塩基認識の制限酵素によってcDNAを断片化し、その末端を放射ラベルした後RLCS法によって二次元電気泳動を行ってスポット化した。その結果、NheI-HinfI断片化によってプロファイルした際、大脳新皮質の後方部分に強く発現する約200bpのcDNA断片のスポットが観察された。現在、これらをゲルから切り出し、クローニングを行った結果、目的のサイズのDNA断片をクローン化することが出来た。今後この断片の遺伝子配列を決定し、さらにノーザンブロッティング法とin situハイブリダイゼーションを用いて領域内での発現量と発現分布について解析を行う予定である。これと平行して、さらに異なる発生・発達段階の大脳皮質領域サンプルを用い、外界から刺激を受けることによって時事刻々変化していく遺伝子発現パターンをさらにプロファイル化していきたい。
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