発生過程にある大脳皮質領域のステージ特異的に発現される遺伝子群の検索を目指し解析を行った。昨年度までの研究では、おもに胎生18日から生後10日目ICRマウス大脳新皮質で発現するmRNAからcDNAを合成し、RLCS法を用いてプロファイリングを行った。その結果、胎生期大脳新皮質後部に高い発現をしめす遺伝子スポットが再現性よく得られた。そこでこれをゲルから切り出し、PCR法を用いてスポットクローニングを行った。その結果、目的とする約200bp長さのcDNA断片を得ることが出来た。本年度は、さらに遺伝子発現プロファイルを脳神経系の記憶・学習といった可塑性に深く関与する神経栄養因子に制御される遺伝子群に絞って解析を行いたいと考え、脳由来神経栄養因子(BDNF)ノックアウトマウスと正常マウス脳についてRLCSを行い、これまで得られた実験データとの比較を試みた。 生後10日目のBDNFマウスと同腹の野性型マウス全脳からmRNAを抽出しcDNA合成を行った。その後、RLCS法によりBspHI-HincII、NcoI-HincII、NheI-HincIIの制限酵素の組み合わせでプロファイリングを行った。その結果、両者の間で発現パターンの異なるスポットを得ることができた。特に興味深かいものとして、M1uI-HincIIでプロファイリングした際にBDNFノックアウトマウスで約2倍に遺伝子発現上昇しているスポット再現性よく同定することが出来た。このスポットは異なる親から生まれた同腹仔マウス同士でも再現性がみられたため、cDNA断片をシークエンスするための現在クローニングを行っている。今後このスポットをシークエンスして遺伝子配列を同定し、発生に伴う変動や空間的な発現を解析したい。また、神経疾患モデルマウスなどを利用することでそれらが神経機能障害に関わるかどうか確かめたい。
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