CDK5は神経細胞でのみ活性がみられるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)であり、神経突起の伸長や脳の層構造形成時の神経細胞の移動に関与していると考えられている。CDK5は神経特異的な活性化サブユニットp35との結合により活性化する。p35は寿命の短いタンパク質であり、プロテアソームによって分解されることが知られている。プロテアソームによるp35の分解は、神経細胞内のp35のタンパク量を決定しCDK5の活性を調節する仕組みとして重要だと考えられる。培養神経細胞内でプロテアソームによるp35の分解は、プロテインホスファターゼの特異的阻害剤であるオカダ酸により促進される(斎藤ら、BBRC、1998)。この時、p35のリン酸化が見られたことから、p35のリン酸化が分解のシグナルになっていることが考えられた。申請者は、本年度の研究実施計画に基づき、このp35の分解に関与すると考えられるリン酸化部位を特定することを目標とした。その結果、p35の分解とリン酸化はCDK5のキナーゼ活性を抑制すると見られなかったことから、CDK5による自己リン酸化であることが示唆された。p35のアミノ酸配列上には自己リン酸化されるうるSerあるいはThrが4ケ所存在する。そこでこの4ケ所のSerあるいはThrをそれぞれリン酸化されないAlaに置換した変異p35を作製し、ラジオアイソトープを用いたリン酸化ペプチドマッピングによる比較を行なった。この結果、リン酸化部位がこの4ケ所のうちの1つであることを特定することに成功した。
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