1.細胞表面の受容体数の予測 細胞死抑制因子のS14G変異体の合成ペプチドをI-125で標識し、培養神経細胞F11に添加した後に架橋剤を用いて結合蛋白に固定して、細胞の放射活性を測定した。この放射活性は非標識体ペプチドを過剰に添加すると低下し、細胞死抑制効果のない変異体ペプチドでは顕著な変化が認められず、特異的な受容体の存在が再確認された。F11細胞に結合した放射活性量から、細胞表面のレセプター数は数百個程度と概算された。 2.受容体下流のシグナル分析 細胞内シグナル因子の阻害剤を用いて細胞死抑制因子の効果への影響を薬理学的に検討した。抑制因子の作用は、MAPキナーゼ阻害剤PD98059やPI-3キナーゼ阻害剤wortmanninでは変化がなく、チロシンキナーゼ阻害剤genisteinで完全に抑制された。さらに、チロシンキナーゼのひとつJAK2キナーゼ阻害剤AG490でも抑制された。よって、細胞死抑制因子のシグナルは受容体からチロシンキナーゼ特にJAK/STAT系を介して伝達されると推測された。 3.レセプター同定への検討 JAK/STATを活性化させる受容体として、成長ホルモンの様な単一受容体とサイトカインのようにgp130と共同で受容体の機能を果たす受容体が考えられた。パニング法による受容体探索が成功しなかったことから、この神経細胞死抑制因子の受容体は後者である可能性が高いと推測された。そこで、gp130を必要とする既知の受容体のアミノ酸配列から機能的には未知の複数の受容体候補を探索してその機能を確認している。
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