我々はこれまで核内転写因子であるNF-κBが、中枢知覚神経細胞のアポトーシス制御活性を持っていることを明らかにしてきた。今年度、本研究において以下の知見が得られた。 1 Differential display法を用いた神経細胞におけるアポトーシス阻害活性担当遺伝子の検討 中枢知覚神経細胞である三叉神経節細胞を培養し、NF-κB遣伝子もしくはその阻害物質であるIκB遺伝子を神経細胞に発現させた。発現後6、12時間後のRNAよりcDNAを作成した。発現変動のみられる遺伝子は、オリゴdTプライマーと制限酵素部位に対するプライマーを使用したPCR法とポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて解析した。結果、NF-κB遺伝子を発現させた細胞では、コントロール群及びIκB遺伝子を発現させた場合に比較して、数種のバンドで発現の変動がみられた。現在、これら変動の見られた遺伝子の同定を行い、アポトーシスとの関連性について検討を行っている。 2 グリア細胞、特にオリゴデンドロサイトでのNF-κBアポトーシス制御活性の検討 あらかじめオリゴデンドロサイト株化細胞であるCG4細胞にNF-κB遺伝子もしくはIκB遺伝子を導入し、安定発現する細胞を得た。これらの細胞を腫瘍壊死因子とインターフェロン-rを使用してアポトーシスを誘導させ、残存生存細胞数からNF-κBのアポトーシス制御活性を検討した。結果、IκB遺伝子を組み込んだ細胞では、コントロール群、NF-κB群と比較して、アポトーシスが亢進していることを見いだした。このことは、神経細胞の場合と同様に、NF-κBがオリゴデンドロサイトのアポトーシス制御に深く関わっていることを示唆しており、初代培養オリゴデンドロサイトにおけるNF-κBのアポトーシス制御活性も現在検討している。
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