本研究において、今年度は以下の知見が得られた。 1.マウスを用いて哺乳類Cox17p mRNAの発現を調べたところ、心臓、腎臓、脳の順に発現が高く、逆に肝臓や小腸においてその発現が著しく低かった。またいくつかのマウスの培養細胞においてCox17p mRNAの発現を調べたところ、脳下垂体や副腎皮質由来の細胞で高く、繊維芽細胞由来の細胞では著しく発現が低いという結果が得られた。さらに出生前後において、脳では新生児期に一度発現が下がるものの成長に従って発現が著しく上昇するのに対し、心臓では胚のそれもかなり早い段階から高レベルで発現していることが明かとなった。 2.全長約9KbのマウスCOX17遺伝子をクローニングし、その遺伝子構造や染色体上の位置を特定した。その結果、マウスCOX17遺伝子は3つのエクソンをコードしており、第16番染色体に位置していることが判明した。また本遺伝子の5'上流領域をルシフェラーゼアッセイやゲルシフト分析により更に詳細に解析した結果、本遺伝子発現には転写因子Sp1及びNRF-1が強く関与していることが明かとなった。 3.上記2.で得られたマウスCOX17染色体DNAを用いてターゲティングベクターを構築し、ES細胞に導入後、キメラマウスを作製した。このキメラと野生型を交配させ、ヘテロマウスを得た。現在COX17遺伝子が完全に破壊されたホモマウスの作成中である。 4.GST-Cox17p融合タンパクを大腸菌に発現させ、これを用いてin vitroにおける金属結合活性を検討したところ、 1)野生型のCox17pペプチドは1分子で約3原子の銅と結合すること 2)推定金属結合モチーフであるCCXC部分のシステイン残基をグリシンに置換した変異体では、銅との結合が著しく阻害されたこと 3)in vitroでは銅以外にも、カドミウムなど他の重金属とも結合しうることが新たに明かとなった。
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