霊長類において垂直、水平方向の輪郭を処理する能力は、傾いた角度の処理より優れており、この事を方位異方性と呼んでいる。この方位異方性は、大脳の第一次視覚野にある、特定の角度の輪郭に反応する細胞において、垂直、水平方向に反応する細胞が多いことが原因とされている。今年度には、我々はこの不均一性の形成を検討するために、視覚環境における輪郭の角度分布について解析した。 デジタルカメラを用いて、鹿児島大学内の3環境(屋内、屋外、自然)について15枚づつ計45枚の画像を撮った。どの環境においても公平な画像を撮るために、水平器を用いて、2分間隔でランダムに写真を撮った。解析はPhotoshop6.0を用いて、画像に円(直径400pixel)を描きsobelフィルターをかけ、0゜から360゜まで5゜間隔で輪郭の分布状況を調べた。 屋内景色から抽出された輪郭の分布は、主要軸(垂直、水平軸)に関して、統計的に強い偏りがあった(p<0.01)。同様の結果が屋外環境からも得られた(p<0.01)。全体の一つ一つの景色をとっても、主要な軸に関して偏っていて、垂直、水平方向の輪郭分布の値は、傾いた輪郭の評価よりも小さかった。そして、自然の景色でも同様な分布を示していた(p<0.01)。 今回の解析の結果をふまえて、方位異方性が私たちの視覚環境と、何らかの関係があるのではないかと考えられる。今後、ネコ視覚野から光計測法によって方位優位性コラムを記録・定量的に分析し、方位異方性との関係を調べる。
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