研究概要 |
サーカデイアンクロックの中枢・視交叉上核SCNから申請者が発見した日周変動性キナーゼp45^<PFK>を同定するため、ラット全脳から精製したp45^<PFK>蛋白質を、2次元電気泳動で分離したスポットについてマススペクトル解析を行い、遺伝情報解析結果などを経て構造決定を行ったところ、プロテインキナーゼである可能性が強く示唆された。SCNの核/細胞質フラクションについて免疫沈降法でp45^<PFK>の活性を測定したところ、CLOCK,BMAL1リン酸化活性を示した。また、そのリン酸化活性に核/細胞質で逆位相の顕著な日周変動を示した。このユニークな活性変動は、時計機構の制御にとって重要な働きをしていることが期待される。 一方、BMAL1などのリン酸化標的候補に対する抗体を用いて、時計機構における蛋白質レベルでの制御の役割を明らかにする為、SCNにおける発現パターンを解析した。BMAL1蛋白質量はSCNにおいて顕著な概日変動を示した。時計の位相変化を引き起こす暗期の光照射により、SCNにおいて速やかなBMAL1の減少が誘導された。光による位相変化を媒介するグルタミン酸、NMDAをSCN培養片に添加しても同様な変化が起こった。これらのことから、時計の位相変化において、未知の細胞内シグナル伝達系を介した時計関連蛋白質の分解等の蛋白質レベルでの制御が重要な役割を果たしていると考えられた。p45^<PFK>などのプロテインキナーゼはそのシグナル伝達を担っている可能性があるので今後解析を進めたい。
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