本研究は、活動する神経細胞に特異的に発現するc-Fosタンパク質の遺伝子のプロモーターを利用して神経線維を可視化するトランスジェニックマウスの作成と、マウスを用いての行動実験装置の開発を目的としている。そのために平成12年度は、以下の1-5を行った。 1.トランスジェニックマウス作成のためのDNAコンストラクション 2.トランスジェニックマウス作成 3.遺伝子が導入されたマウスの同定とトランスジェニックマウス系統の確立 4.トランスジェニックマウスにおける導入遺伝子の発現の確認 軸索に輸送されるように改編したマーカー遺伝子(tau-lazZ)をc-fos遺伝子のプロモーターによって発現誘導されるようにコンストラクトを作成し、トランスジェニックマウスを作成した。得られたマウスにおいて、カイニン酸によって神経細胞を刺激して強力にc-Fos遺伝子を活性化したところ、脳内の多くの部位で導入遺伝子の発現が認められ、神経細胞の軸索、樹状突起がβ-gal酵素活性により可視化された。しかしながら、行動実験を行ったマウスの脳ではマーカーの発現は認められなかった。これは、通常の行動実験条件でのc-Fosタンパク質の発現はカイニン酸刺激によるものよりも弱いことが原因であると思われる。本研究では行動実験条件でマーカーを観察できることが求められるので、今後コンストラクトの改良などにより行動実験条件下でマーカーの発現が観察できるように改善していく必要がある。 5.マウス視聴覚弁別課題装置のセットアップ 視聴覚弁別課題プログラムを作成し、マウスをトレーニング中である。われわれはすでにラットで同課題を用いて解析を行ってきたが、マウスでも弁別課題が学習可能であることが確認された。
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