筋紡錘由来のla群線維と運動ニューロン(MN)の中枢内結合(伸張反射路)は、標的MNあるいは両者の末梢標的である筋由来の因子による機構で形成されると推察されているが、伸張反射路形成に果すMNsや筋の役割は不明である。 新生マウスの伸張反射路は未だ動的に変化しており、この時期のMN軸索の切断はアポトーシスを誘導する。一方、アポトーシス制御遺伝子、Baxの欠損マウスでは、細胞死抑制により軸索切断で筋由来の情報を断ったMNの生存維持が可能なはずである。 本研究は、Bax欠損マウスのMN軸索切断後のla群線維投射の変化の解析から伸張反射路の中枢内結合の再構築に標的組織由来因子が与える影響を明らかにすることを目的とし、今年度は以下の実績を上げた。1)米国Jackson Laboratoryから購入したBax欠損マウスの系統と遺伝子型判定を確立し、マウスを供給した。2)マウス新生仔を固定後、第4腰髄の前根と後根にそれぞれ脂溶性標識色素Dil、DiDの結晶を挿入し、二重染色した同節のMNと一次求心性線維の形態を共焦点レーザー顕微鏡で画像解析した。Bax-/-では、Bax+/+やBax+/-よりもMN数と前角への一次求心性投射が増加していた。3)生後0日に坐骨神経を切断し、末梢神経切断に伴う7日齢マウスのMNの細胞数と形態変化を2)と同様の方法で解析した。Bax+/+とBax+/-では、手術側の第4腰髄運動ニューロン数が健常側と比して約90%減少したのに対して、Bax-/-では約30%しか減少しなかった。Bax-/-では、MNの自然細胞死と神経軸索切断によるMNの死が抑制されることが示唆された。 来年度は、上記知見に定量的解析を加えるとともに、筋由来の情報を断ったMNへの一次求心性線維側枝の投射様式の変化について電気生理学的研究を進める。
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