1.L7-Creノックインマウスの作製・解析 本研究における目的の一つは、小脳プルキンエ細胞、眼の双極細胞特異的な発現をするL7遺伝子のコドンにCreタンパク質遺伝子を挿入したマウス(L7-Creノックインマウス)を作製することにより、小脳プルキンエ細胞、眼の双極細胞における遺伝子操作を可能にするシステムを開発する事にある。そこで、L7-Creノックインマウスを作製するとともに、このマウスにおけるCreタンパク質の発現、機能の時期、組織の特異性を解析した。Creタンパク質が機能する細胞でLacZ遺伝子が発現するマウス(テスターマウス)とかけ合わせにより、L7-Cre遺伝子、テスター遺伝子を共に持つマウスを得た。このマウスをLacZ染色して、Cre機能の特異性を解析した。その結果、成体において、LacZ染色された組織は、小脳のプルキンエ細胞、眼の網膜の双極細胞と光受容細胞で検出された。そこで、小脳プルキンエ細胞での、Creタンパク質による組み換えの時期および組み換えの割合についてさらに詳しい解析を行った。その結果、成体の小脳のプルキンエ細胞の95%以上で組み換えがおこっていること、胎児において、16.5日胚で0%、17.5日胚で42.9%、18.5日以降の胚では100%の胚で組み換えがおこることが明らかとなった。現在、引き続き、眼における組み換えのおこる時期および細胞の解析を行っている。また、RTPCR法によりCre遺伝子発現の特異性を調べた結果、小脳、眼球以外の組織での発現は、検出されなかった。以上の結果から、本研究の目的の一つである、小脳プルキンエ細胞、眼の網膜特異的に遺伝子改変を行うためのL7-Creマウスの作製することができたと考えられる。 2.P/Q型電位依存性Ca2+チャネルの小脳プルキンエ細胞における機能解析 本研究のもう一つの目的は、P/Q型電位依存性Ca2+チャネルをコードする電位依存性Ca2+チャネルα1A遺伝子機能を全ての時期、組織で欠失した(ノックアウト)マウス、およびCreタンパク質の働きにより時期、組織特異的に電位依存性Ca2+チャネルα1A遺伝子を欠失した(コンディショナルノックアウト)マウスを作製して機能を解析することである。現在、電位依存性Ca2+チャネルα1A遺伝子ノックアウトのへテロマウスを得てノックアウトマウスの解析に向けてヘテロマウス同士のかけ合わせを行っている。また、相同組み換えにより得られたES細胞からコンディショナルノックアウトマウスのキメラマウスを得た。現在、このキメラマウスとB6系統のマウスとかけ合わせを行っている。
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