本研究では、多孔性高分子薄膜(ハニカムフィルム)を肝実質細胞-非実質細胞間のインターフェースとして用いることにより、人工肝組織デバイスの作製を試みることにした。このフィルムを用いることで、(1)多孔性微細表面形状によるマトリックスへの細胞接着の制御を行いつつ、(2)フィルムの両面における細胞培養即ち、細胞間コミュニケーションが実現された三次元的な組織の構築が可能になる。 本年度は、分解性、生体吸収性のポリマーであるポリ乳酸、ポリε-カプロラクトンに着目し、これを主成分とする自己支持性ハニカムフィルムの作製を行った。このハニカムフィルムの両面において細孔が確認され、貫通した細孔構造を有することが明らかとなった。このハニカムフィルムはシート状材料として得られるだけでなく、チューブ状構造に加工することもできた。さらに、ポリε-カプロラクトンからなるハニカムフィルムは延伸可能であり、細孔の配列に異方性を持たせた多孔性フィルムにすることもできた。 自己支持性ハニカムフィルムをマトリックスとして肝実質細胞・心筋細胞の培養を行った。肝細胞は立体化した形状を取り、シート状組織を形成することが明らかとなった。また、フィルムの両面において肝細胞を培養することにより、三次元培養が可能であることを明らかとした。延伸ハニカムフィルムをマトリックスに用いた場合、心筋細胞の配列を制御できた。
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