研究概要 |
本研究では血管穿刺時に得られる力学情報や血液の接触検知情報により針の制御を行うための制御系を開発することを目的としている.これまで正常に穿刺できたときの穿刺力波形や電気インピーダンスの変化については同一固体において定性的な再現性が得られている.本年度はまず定量的な再現性を得るためにセンサの設置方法を再検討するとともに,従来手動で行っていた針の位置決めを要求備品の3次元マニピュレータ(シグマ光機SGSP20-85)を用いて電動化して精度確保を行った.穿刺力計測センサは使い捨て採血針の取り替えの際に取り付けのクリアランスが狂い易い構造であったため,取り替え時の影響のない独立構造とした.これらの装置を用いてウサギ5頭に対して後耳介静脈への穿刺実験を行い,穿刺力波形の再現性について検討した.穿刺力波形はその形状に個体差は認められなかったが,大きさには差が認められた.しかしながら同一個体においても穿刺毎に差がある場合もあり,穿刺力波形の大きさは皮膚の固定状態に大きく依存すると考えられた.また今回センサの精度向上により針先が皮膚を滑る様子が穿刺力波形から判断できた.穿刺失敗の原因である血管潰れや貫通は同一個体での波形のバラツキのため,穿刺力からは判断できなかった.血管が潰れても針先が血管内に入って血液に触れたことは電気インピーダンスなどによって判断が可能であることはこれまでの研究で確認されているが,血管が潰れていく過程を穿刺力から検出できれば血管貫通事故防止が可能と思われる.これにより再現性のある穿刺力波形計測の条件を設定するため,穿刺部位の皮膚の固定が重要であることが示唆された.来年度は穿刺部位の皮膚固定方法について蚊の吸血機構を参考に検討を行う.
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