本研究は、光熱変換分光法を応用した深部生体情報計測法の確立を目指し、生体の光熱変換信号の特性を考慮したマイクロフォンの設計、試作を目的としている。 従来、脈拍や環境雑音の影響を抑えるためマイクロフォンと試料間に共鳴管を設けた構造の生体用光熱変換信号検出装置(セル)が検討されている。本研究室でも、ヘルムホルツ型の共鳴管をもちいたセルによる深部生体情報計測を試みてきた。しかし、生体計測に必要とされるS/Nは-50dB以下といわれており、現在、ヘルムホルツ型セルでは十分な感度が得られていない。 そこで、平成12年度では、新たに、回転楕円形状の共鳴管を設けたセルを提案し、試作・検討を行った。以下に、その経過と主な成果を示す。 (1) コンピュータ・シミュレーションによる音響解析 有限要素法を用いたコンピュータ・シミュレーションにより回転楕円型共鳴管の共鳴周波数、Q値、寸法について検討を行った。 (2) 回転楕円型生体用セルの試作、性能評価 (1)の検討を基に、試作した回転楕円型生体用セルについて性能評価を行った。その結果、これまで本研究室で使用していたヘルムホルツ直管型生体用セルに比べ、Q値は約8倍、S/N比は約18dB向上した。これにより、生体用光熱変換分光計測装置全体の信号検出限界が、-48dBとなり、生体計測に必要とされるS/N比に到達したと考える。 (3) グリコヘモグロビンを対象とした基礎実験 実際に生体計測を実施する前に、基礎実験として、グリコヘモグロビンを対象としたin vitro計測を行った。その結果、グリコヘモグロビンの血中濃度変化を約1%オーダで分別定量が可能であることを確認した。
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