研究概要 |
本研究では、初期位相の異なる複数のMRE画像を利用して生体組織のin-vivo局所弾性率を測定する頑健な手法を確立することを目的としており,本年度はコンピュータシミュレーションと単純なファントム(弾性模型)を用いた計測実験を行った. 物質の弾性率は,弾性体内部を伝わる弾性波の伝達速度と関係することが知られており,伝達速度は外部振動と弾性波の波長の掛け算で求めることができることから,局所弾性率は局所波長を計測することで推定することができる.MRE法に用いる外部振動の周波数は粘性の影響を避けるために低周波振動を用いる必要があるため波長が長くなるが,撮影開始時間や外部振動の位相をコントロールすることで容易に初期位相の異なる弾性波を収集することができる.今回,初期位相の異なる複数の弾性波を利用することにより1波長よりも短い領域のデータしか収集できない場合においても局所波長を測定可能な新しい手法を開発した.本手法をコンピュータシミュレーションによって生成したノイズや歪みのない理想的なMRE画像やノイズを含む画像に対して適用し,従来手法と比較して空間分解能が高く,ノイズに頑健であることを確認した. 次に,弾性率が均一なファントムを利用した撮影実験を行い,得られたMRE画像に対して本手法を適用することで局所弾性率の計測を行った.このようにして得られた局所弾性率の定量性を評価するために,物理計測器(動的粘弾性計測装置)を用いて得られた計測結果との比較を行った.弾性率の異なる複数の物体について計測した結果,両者の相関が高いことを示すことができた.
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