研究概要 |
1)DNA結合領域の設計と結合能の評価 c-fos,c-junタンパク質のDNA結合領域に見られるアミノ酸配列に基づいて、DNA結合性ペプチド(F/J-P:RNKTAAAKSR-NPGG-RSKSAAIRNR)を設計し、合成を行った。F/J-PのDNA結合能を評価するために、F/J-P固定化セルロース担体を作製し、GFP(Green Fluorescent Protein)をコードするプラスミドDNA(pGFP)を添加して、F/J-Pセルロース担体に結合したpGFPを定量した。その結果、F/J-P固定化セルロース担体は有為にDNAを保持することが示され、また、その解離定数は1.8×10^<-4>Mであった。 2)ぺプチド/DNA複合体のヌクレアーゼ耐性能の評価 In vitroにおいて、F/J-PとpGFPの複合体を種々の分子数比で混合して形成させ、DNase Iを作用させた。アガロース電気泳動後、閉環状pGFPのバンド強度を測定し、ヌクレアーゼ耐性を示す分子数比を調査した。その結果、pGFPとF/J-Pの分子数比が1:1000までの範囲で、有為に、DNase Iからの保護作用を示した。 3)培養細胞への導入 細胞内に導入したF/J-PとDNAの複合体が、細胞内で安定に保持され、遺伝子発現を行うかどうかの検討を行った。先ず、上記2)で明らかにした、DNase Iからの保護作用を示す分子数比(pGFP:F/J-P=1:1000)で複合体を形成させた。その後、リン酸カルシウム法を用いて、NIH-3T3細胞に対して遺伝子導入を行った。GFP遺伝子の発現効率を測定した結果、F/J-PとpGFPの複合体、pGFP単独の場合共に、発現効率は約30%であった。この結果から、F/J-Pは細胞内において、リン酸カルシウム法と同程度のDNAに対する保護作用を示し、また、遺伝子発現の阻害は示さなかった。
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