研究概要 |
本年度はゾル-ゲル法を用いてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(γ-MPS)を出発原料とした有機-無機ハイブリッドの合成条件を検討するとともに,その生体活性について調査した。 市販のγ-MPSにエタノール(EtOH)及び過酸化ベンゾイルを加え,80℃で3時間保持しγ-MPS重合体を得た。一方,EtOHに適量のCaCl_2及びH_2Oを混合し別の溶液を得た。両溶液を室温で10分間攪拌しゲル化させ,乾燥の後,試料を得た。 ^<13>C及び^<29>Si MAS NMRを用いて試料の構造解析を行ったところ,CaCl_2を添加しなかった試料には50.7ppm付近にSi-O-^★CH_3のCに帰属されるピークが観測されたのに対して,CaCl_2を添加した試料には観察されなかった。さらに,CaCl_2を添加しなかった試料はSi-O-CH_3の加水分解・縮重合が生じていないSiのピーク(T0)が面積比で約70%を占めていた。これに対しCaCl_2を添加した試料はSi原子周囲の酸素原子の2つが架橋しているのピーク(T2)が約60%を占めていた。これらのことからCaCl_2の添加は,γ-MPSのSi-(OR)_3基の原子の加水分解・縮重合反応を促進していると考えられた。 板状試料を36.5℃,pH7.4の擬似体液に各期間浸漬した後,試片の表面構造を薄膜X線回折(TF-XRD)により調べた。その結果,CaCl_2添加量が多い試料ほどアパタイト形成速度が速くなることが分かった。さらに,試料を浸漬した擬似体液のイオンの濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により調べたところ,CaCl_2を多く添加した試料は擬似体液浸漬初期にCa(II)が溶出し擬似体液のアパタイトに対する過飽和度が上昇することで早期にアパタイトを析出することが分かった。 次年度はこの材料の骨石灰化機構について検討を行う。
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