研究概要 |
摺動面潤滑液曝露時間が人工関節設計用パラメータとして非常に有効であることが証明され,これを用いた設計案を例示することができた.人工関節の摩耗は潤滑状態と深い関連があり,潤滑状態は二つの摺動面の接触面圧と滑り速度により決定されるという一般的見解にインパクトを与えることができた.設計パラメータはHard-on-PolymerとHard-on-Hard人工関節両方に適用できた.平成13年度の新たな具体的成果は以下め通りである. 1.Hard-on-Polymer人工関節の代表例として超高分子量ポリエチレンとアルミナセラミックスまたはCo-Cr-Mo合金の摩耗試験を行った.両材料とも曝露時間が長いとポリエチレンの比摩耗量は一定値を示すが,曝露時間が短くなるに従い比摩耗量が増大した.比摩耗量は同じ表面粗さでもセラミックスの方が低値であり,この原因として粗さ形状の影響を提案した.,接触面圧が20.0MPa程度に上昇すると,境界潤滑膜の破断・形成不全→ポリエチレン凝着物の形成→ポリエチレン移着膜形成,という新たな低摩耗化機構が発現することが実験的に明らかとなった. 2.Hard-on-Hard人工関節の代表例としてCo-Cr-Mo合金同士の摩耗試験を行った.全体的には曝露時間を短縮すると比摩耗量が増大した.これは,耐摩耗性を示す摺動面金属酸化膜が摩擦により損傷した場合,その修復に潤滑液中の溶存酸素を必要とするためと考えられた.しかし一方で,生体内程度の溶存酸素濃度の低下は摩耗を低下させるという事実が明らかとなった.この現象の説明として,酸素濃度の低下は摺動面同士の凝着部の増大をもたらし,高摩擦による金属組織の微細化や加工硬化が発現したためと考えられた.
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