研究概要 |
血流フリーラジカル発生に伴う組織微小循環や好気性エネルギー代謝の影響により、局所pHが低下するため、スーパーオキシドラジカル(O_2・^-)の高効率な消去系の確立を試みた。そこで、O_2・^-を過酸化水素(H_2O_2)と酸素(O_2)に不均化するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を有する金属ポルフィリンを核とした、樹木状多分岐高分子の設計を行った。 金属ポルフィリンのSOD活性発現に重要な役割を演じている4つのカチオン性ピリジル基を保存しつつ、高分子側鎖を樹状成長させることが容易な脂肪族第一級アミノ基のワンステップ導入を行った。つまり、2-ブロモエチルアミンを用い、5,10,15,20-テトラキス(4'-ピリジル)ポルフィリンのピリジル基の4級化に成功した。4分岐の脂肪族第一級アミノ基が得られたので、O_2・^-過剰発生臓器に対する標的指向性を有する糖鎖を、(最)外殻アミノ基へ還元アミノ化により導入した。最後に中心金属にマンガン(Mn)を導入し、糖クラスターを有するカチオン性Mnポルフィリン錯体を合成した。得られたポルフィリン錯体は水溶性を有しており、凍結乾燥により回収した。そのSOD活性はストップトフロー分光蛍光光度計を用い評価した。ポルフィリン低濃度域(0-1[μM])においてO_2・^-不均化反応速度定数(Kcat)を算出すると、10^7[M^<-1>S^<-1>]オーダーの有意な値が得られた。 並行して、O_2・^-を誘因としないpH変化を認識するセグメントの導入を考慮し、イミダゾール基を有するポリ(L-ヒスチジン)に着目した。上述の系に準じ、イミダゾール基への2-ブロモエチルアミンの導入に成功した。その結果、pH応答性部位のイミダゾール基と化学修飾部位のアミノ基が共存する医薬キャリアー前駆体が得られた。
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