細胞を含んだ移植材料作成において、細胞数の確保は必須である。一方で、継代による細胞数の増加は細胞の表現型の喪失を伴う。本研究ではヒト半月板より細胞を採取し、系代を繰り返した後にその表現型が細胞培養基質によって変換可能かどうかを検討することを目的とした。特に繊維芽細胞に特徴的な中間径フィラメントとしてビメンチンをマーカーとしてその染色性から検討を試みた。 半月板より得られた細胞は、プラスチック皿上にて二極性の形態を示した。また、得られた細胞は系代可能であり、I型コラーゲンコートしたガラス上、免疫染色にてビメンチン陽性であった。これらの細胞を含んだ状態のI型コラーゲンをガラス上にて半球形を保った状態でゲル化させた。位相差型顕微鏡にて細胞は二極性に近い形態を示した。ただし、ビメンチンの染色性は異なり、ゲルの周辺部ではビメンチン陽性、ゲルの中央部ではビメンチン陰性となった。 I型コラーゲンコートしたガラス上での形態観察およびビメンチンの染色性から半月板から得られた細胞、系代して増加した細胞はともに繊維芽細胞様であった。これら細胞は同一コラーゲンゲル内において部位によってビメンチン染色性が異なったことから、その形質はコラーゲンゲルによって変化すると考えられる。半球状のコラーゲンゲルはその部位によって力学的性質が異なると考えられることから、細胞外基質の物性により系代後、一見表現型を消失している細胞であっても、その表現型は修飾可能であると考えられる。 以上から、半月板細胞は採取した後、継代し十分な数を得た後でもなおI型コラーゲンゲルにて目的の表現型に転換可能である可能性があると考えられた。
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