研究概要 |
流れや内圧変化により動脈壁に発生するずり応力や壁張力の変化が,動脈硬化に代表される血管障害発生の一因として現在考えられている。本研究は摘出動脈に対して人為的に流れや内圧変化などの機械的刺激を負荷した状態での動脈の挙動を定量的に評価する実験システムの構築と,これを用いた生理学的,病態生理学的な血管障害発生機序の解明を目的とする。 本年度は主として実験システムの構築とその評価を実施した。実験システムは,摘出動脈槽および摘出動脈内に任意の静的・動的内圧および任意の流量の流れを負荷する内圧発生・制御システム,摘出動脈を観察するための光学顕微鏡・および画像撮影システム,動脈の外径を連続的に測定・記録する計測システムより構成される。上記構成の実験システムの評価として,摘出ラット腎動脈に対して静的および周期的内圧変化の負荷および同条件下での流れ負荷試験を行い,静的および動的いずれの場合においても正確な任意の内圧変化を負荷できる事を確認した。また,流れ負荷においては,流入圧および流出圧差を利用して圧力差に応じた流れが負荷できる事を確認し,これらも静的および動的内圧負荷においても再現性のあることを確認した。さらに,摘出ラット腎動脈において,内圧刺激によると考えられる収縮機構の存在を確認し,また,これらの挙動が流れの有無により変化する可能性のある結果を得た。 次年度は,内圧変化や流れ等の機械的刺激が,動脈壁の収縮挙動等におよぼす影響についてさらに実験をすすめると共に,これらの刺激と血管障害発生の関連について調査をすすめる予定である。
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