研究課題/領域番号 |
12792010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小松 利光 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (50091343)
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研究分担者 |
井上 徹教 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (70311850)
押川 英夫 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (80311851)
安達 貴浩 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50325502)
井芹 寧 西日本技術開発(株), 環境部・研究開発課, 課長
島谷 幸宏 土木研究所, 環境部・河川環境研究室, 室長
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キーワード | 水質改善 / 表層水供給 / 貯水池 / 溶存酸素 / 栄養塩溶出 / 水温成層 |
研究概要 |
本研究では、密度成層により嫌気化した底層へ、溶存酸素を豊富に含む表層水を供給する水質改善システムを提案している。平成12年度においては、本システムの実湖沼における水質改善効果を調べる目的で、面積約15,000m^2、最大水深約5mの貯水池において現場実験を行った。 実験装置は表層水を送水する水上ポンプ部と、送られてきた表層水を冷却し底層部へ放出して混合させる水中部から構成されている。水質観測は多項目水質センサーにより週に一度の頻度で行った。観測項目は水温、電気伝導度、溶存酸素濃度、pH、濁度、酸化還元電位、水深であり、選定した観測点毎に鉛直方向に0.5m間隔で測定した。さらに代表的な観測点のみ表層、中層、底層において採水し、栄養塩濃度及び溶存金属濃度を測定した。その結果、本システムの稼動により溶存酸素濃度は表層水放出地点付近でのみ若干の回復が確認されたが、他の観測点においては顕著な影響は観測されなかった。しかしながら植物プランクトンの異常増殖の原因となるアンモニア、リン、溶存鉄、溶存マンガンなどの溶存物質濃度については本システム稼動直後から顕著な減少傾向が観測され、稼動1ヶ月後には好気的な環境下での濃度レベルにまで減少した。これは濃度の増加としては確認されない程度の溶存酸素の供給でも、底層、堆積物内部の酸化還元電位を増加させ、堆積物からの溶存物質溶出を抑制した結果であると考えられる。 更に、本システム稼動の前後においてそれぞれ採取した未撹乱堆積物コアを用い、室内実験により堆積物による酸素消費速度を計測した。その結果、本システム稼動後には堆積物による酸素消費速度が稼動前の1/2から1/3程度に減少していることが確認された。これは表層水供給により夏期の成層期間中においても堆積物表層での好気的分解がなされ、堆積物中の易分解性有機物量が低下したためと考えられる。 以上の研究結果より、本システムによる水質、底質改善効果が定量的に確認された。
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