研究概要 |
本年度は,以下の4つのテーマに関して,転写印刷法により半導体ガスセンサを作製することにより,その特性改善を試みた。 (1)ヘテロ積層化による水素ガス感度の改善とその検知機構 H2ガス感度が低い酸化インジウム(In_2O_3)系センサおよび酸化チタン(TiO_2)系センサに(貴金属担持)酸化スズ(SnO_2)膜を積層してヘテロ構造を構築した。その結果,In_2O_3系センサはあまり感度の向上が見られなかったのに対し,TiO_2系センサの感度は大きく向上した。これは,SnO_2/TiO_2センサ素子の導電パスは,下層のTiO_2のみではなく,より低抵抗のTiO_2-SnO_2-TiO_2であることから,ガス感応部が白金電極-SnO_2膜間の酸化チタン部に制限されたためであると考えられる。 (2)酸化クロム-酸化スズ系センサのNOx検知特性 Sn0_2に様々な量の酸化クロム(Cr_2O_3)を担持した粉末を用いてセンサを作製し,その特性を評価した。その結果,Cr_2O_3担持量を0wt%から1wt%へ増加するとその粉末のゼータ電位が負から正に大きく変化すること,さらにゼータ電位が約0の粉末を用いたセンサはNOおよびNO_2にほぼ同程度の高い感度を示すことから,全NOxセンサ用材料として有望であることを明らかにした。 (3)酸化亜鉛(ZnO)系ガスセンサのNO_2検知特性 スピンコーテイングにより作製した転写膜を用いて4-5μm厚のZnO系センサを作製し,その特性を評価した。その結果,ZnO-WO_3/ZnOセンサがNO_2に対して最も高い感度を示すことを明らかにした。 (4)半導体ガスセンサによる芳香族系有機化合物の検出 ベンゼンおよびクロロベンゼンに対して高い感度を示す酸化物半導体を探索した。その結果,In_2O_3膜が両ガスに対して最も高い感度を示すことが分かった。さらに,NiOをIn_2O_3に6wt%担持することにより感度が増加すること,6NiO-In_2O_3膜を2層,3層と積層して厚膜化することによっても感度が増加し,ベンゼンには500℃,クロロベンゼンには400℃で最大感度を示すことを明らかにした。
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