研究課題
正極材料について、以下の成果を上げた。次世代のリチウム電池正極材料として着目されているリチウムマンガンスピネルLiMn_2O_4の精密合成を行い、酸素欠損量と組成、構造との関連を、中性子回折や磁気測定手法によって精密に決定した。リチウムマンガンスピネルを高温焼成で合成すると、酸素欠損が生じること、その欠損は低温で規則配列をし、複雑な超格子構造を形成すること、磁気的性質と構造・電気化学特性と密接な関連があることを明らかにした。この成果をもとに、18650型小型円筒型電池を作成し、その充放電後や高温保存後のマンガンスピネルの結晶構造解析を行った。その結果、高温保存によって酸素欠損量が増加すること、電池特性は酸素欠損量と密接に関連することを明らかにした。鉄含有リチウムマンガン層状酸化物のリチウム電池電極特性の出現を目的として、鉄固溶体を水熱法で作成した。その結果、リチウム電池正極として充放電可能なこと、充電過程において、鉄は4価の珍しい原子価状態を取ることを明らかにした。負極材料について、結晶化度の低いハードカーボンのリチウム吸蔵機構を解明した。中性子小角散乱法を用いて構造中の大きな構造単位の解析を試みた。その結果、ハードカーボンはグラファイト層とポア空間から形成されること、リチウムインターカレートの初期段階にはグラファイト層間に挿入するインターカレーション反応であり、反応後期段階はリチウムはポア内にクラスタを生成して吸蔵される二種類の機構によって進行することが明らかになった。