研究課題
本年度は、炭化用成型物調整のために木材の部分可溶化を主に検討した。木質試料として青森県産スギ木粉(製材オガクズ)を用いた。フェノール/水混合溶液(1/1wt.)中にフェノール/木粉重量比率が1となるように配合し、硫酸触媒(木粉1gに対し1mMol)を添加して徐々に加温し、最終温度150℃になるように反応を行った。反応時間を調整し最高の溶解率を示す条件を確立した。最大溶解率を示す条件では、得られた生成物中に41%の未溶解物が含まれていた。この未溶解物を分析した結果、主成分はセルロースであることが判明した。この反応を経時的に追跡し木粉の溶解機構を検討した結果、先ずフェノール/水混合溶液で木粉が膨潤し、硫酸を含むフェノールが木粉中に浸透する。ついで、反応温度が上昇して混合溶液中の水が系外に除去されるとともに浸透したフェノールにより木粉の溶解が始まることが判明した。ここでは、木粉中のリグニンが最初に溶解を始め、ついでヘミセルロース成分が溶解するとともにこれらの成分は酸分解と分解物とフェノールとの反応が起きることを確認した。41%の未溶解物量は木材分析でのセルロース含有量にほぼ一致する。生成物中の溶解分の分子量分布では高分子量成分の含有量が高いことを認め、リグニンの分解はそれほど起きていないことがNMR分析から確認された。この溶解分は常温で固体であるが110℃以上で融解する。成形予備試験の結果、成形物は不溶解物中のセルロース成分と溶解分から来る樹脂物からなる樹脂複合体となることが判明した。現在、均一な複合体の調整とこれのセラミックス化を検討中である。
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