研究概要 |
今年度は以下の成果を得た. 1)Keapl欠失マウスの作製・AhR過剰発現マウスの作製 培養細胞を用いた実験から,Keaplは,異物代謝系第2相の酵素群の発現誘導に重要であるNrf2の活性を負に制御する因子であると予想されていた.今回われわれはKeapl欠損マウスを作製したところ,このマウスの肝臓において,Nrf2の活性が増強していること,さらに,異物代謝系第2相の酵素の発現が誘導されていることが観察された.これにより,個体レベルでKeaplがNrf2の活性を負に制御する因子であることが証明された.また,AhRを皮膚特異的に過剰発現するマウスを作製したところ,皮膚の角化異常が観察された. 2)ヒト型AhRマウスの作製 ヒト型AhRは,マウス型AhRに比べて,ダイオキシンに対する親和性が低い.マウス型AhRの替わりに,ヒトAhRを持つマウスを作製したところ,このマウスは3-メチルコラントレンに対する反応が減弱していることが明らかになった. 3)Nrf2欠損マウス・AhR欠損マウスの環境異物に対する反応の解析 3-メチルコラントレン投与により,AhR欠損マウスではCYP1A1及びCYP1A2の発現誘導が認められなくなるのに対し,Nrf2欠損マウスではその誘導は認められなかった.異物代謝系第1相酵素群であるCYP1A1及びCYP1A2の発現誘導にはNrf2は関与しないことが確認された. アセトアミノフェン投与により,Nrf2欠損マウスは効率に重症の肝障害をおこすことが観察された.Nrf2は,アセトアミノフェンの急性毒性の防御に重要であることが明らかになった. Nrf2::AhR2重欠損マウスにBHAを投与したところ,CYP1A2の誘導が観察された.BHAによるCYP1A2の誘導には,Nrf2・AhRのいずれも介さない誘導系が存在することが示唆された.
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