京料理の成分を応用した新しい癌予防法の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12794011
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (20186993)
• 研究分担者: 吉田 達士 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (80315936) ; 松崎 洋一郎 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (70282522) ; 曽和 義広 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (70315935) ; 野村 仁 中外製薬株式会社, 創薬研究担当部長 ; 神山 順 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (20257538)
• キーワード: 酪酸 / フラボノイド / ケルセチン / gadd45 / ビタミンD_3 / p27 / NF-Y / プロモーター

研究概要

これまでに京料理で多用される根菜類に多く含まれる食物繊維の代謝産物である酪酸がp53非依存的にgadd45遺伝子を活性化し、遺伝子損傷を受けた際に、修復や、アポトーシスに進むメカニズムを報告してきた。今年度は、酪酸以外のgadd45遺伝子活性化薬剤の検索を、京野菜、緑茶、豆類に含まれるフラボノイドなど食品成分を中心に行った。その結果フラボノイドの一種であるケルセチンが、HeLa細胞でgadd45遺伝子を活性化することが明らかとなった。HeLa細胞ではケルセチン処理によるp53の活性化が認められず、ケルセチンによるgadd45遺伝子の活性化はp53非依存的であると考えられた。またgadd45の活性化は、mRNAレベルで認められたが、プロモーターレベルでは変化がなかった。このことはUV照射や酪酸によるgadd45遺伝子の活性化の機構とケルセチンによるそれが異なることを示唆している。またケルセチンの他、ルテオリンやアピゲニンもgadd45遺伝子を活性化することを見出した。今後更に詳しい機構を解析し、遺伝子修復能力を高め癌を予防する新しい薬剤の開発につなげたい。
同様に京料理に多用される茸類に多く含まれる活性型ビタミンD_3がサイクリン依存性キナーゼ阻害剤であるp27を転写因子Sp1とNF-Yを介してプロモーターレベルで、活性化することを報告してきた。今年度はp27プロモーターの活性化はNF-Yのサブユニットの一つであるNF-YAの亜型のうち、長型より短型がより強力に起こすこと、またその違いである約28アミノ酸がp27プロモーターの活性化には抑制的に働くドメインを形成している可能性のあることを見出した。今後はビタミンD_3がスプライシングの違いを引き起こすメカニズムや、このドメインに会合する因子を確定して、より強力にp27プロモーターを活性化する方法を開発したい。

研究成果

• [文献書誌] Matsukawa, Y., Nishino, H., Yoshida, M., Sugihara, H., Katsura, K., Takamatsu, T., Okuzumi, J., Matsumoto, K., Sato-Nishimori, F., Sakai, T.: "Quercetin enhances tumorigenicity induced by N-Ethyl-N'-Nitro-N-Nitrosoguanidine in the duodenum of mice"Environmental Health and Preventive Medicine. 6. 235-239 (2002)
• [文献書誌] Matsuzaki, Y., Miyazawa, K., Yokota, T., Hitomi, T., Yamagishi, H., Sakai, T.: "Molecular cloning and characterization of the human p19^<INK4d> gene promoter"FEES Letters. 517. 272-276 (2002)
• [文献書誌] 神山順, 酒井敏行: "遺伝子調節化学予防-発癌の遺伝子異常に基づいた新しい予防法の開発-"医学のあゆみ. 204. 3-6 (2003)
• [文献書誌] Kanazawa, M., Satomi, Y., Mizutani, Y., Ukimura, O., Kawauchi, A., Sakai, T., Baba, M., Okuyama, T., Nishino, H., Miki, T.: "Isoliquiritigenin inhibits the growth of prostate cancer"Eur.Urol.. (In press). (2003)