研究概要 |
1)ヒトパルボウイルスB19は,従来の不活化法であるsovent/detergent法では不活化できないウイルスである.また,その小さのためフィルターで除くこともできない.短波長紫外線(UVC)照射による不活化を試みた.このため,赤芽球系細胞を利用した感染性アッセイ法を開発した.このアッセイ法を用いて,UVC照射により実用化出来る程度にまで不活化できることを示した.多くの場合,第VIII因子製剤中のB19が問題となるため,第VIII因子のUVCからの保護が必要となったが,カテキン類の保護剤の添加により,これを回避出来た. 2)ジメチルメチレンブルーはメチレンブルーよりも優れた光増感剤である.このジメチルメチレンブルーを用いてヘモグロビン溶液を光不活化処理したときの起こる不活化の機構および問題点について明らかにした.不活化の機構は活性酸素によることが明らかになった.活性酸素が関与するため,ヘモグロビンが酸化されてしまう問題点があることを明らかにした.この問題点の克服は次年度のテーマである. 3)UVC照射によるウイルスの不活化機構について実験した.UVC照射によって,ウイルス核酸が損傷を受け,ピリミジンダイマーおよび6-4付加体が出来る事は知られていた.しかし,これらの損傷の程度と不活化との相関は今まで殆ど研究されたことがない.M13ファージをモデルウイルスとしての実験の結果,よい相関が見られた.また,ウイルスのタンパクには損傷が見られなかった.活性酸素の関与も否定された.従って,UVCはウイルスの核酸に損傷を与えることにより,不活化すると結論した.
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