研究概要 |
輸血に用いられる血液は種々の検査を行ない,安全なものが供給されているが,それでも厳格な検査体制をすり抜けるウイルス汚染血液があることは否めない.従って,検査方法の改良と同時に,本研究目的である,ウイルスの除去および不活化が必要とされている.今年度の研究成果は以下の通りである. 1)交通事故等による大量出血にたいする応急処置の際,ヘモグロビンの投与が有効な場合がありうる.それに対して,人工的なヘモグロビン代替物の投与が研究されているが,献血で集まった血液からヘモグロビンを取り出し,投与する方法も有効である.このような目的で,ヘモグロビン溶液からのウイルスの除去および不活化を検討した.熱処理および電気化学的手法の開発を行なった.また,Planova膜が除去に有効であることが分かった. 2)パルボウイルスはあまり重要視されないウイルスであるが,妊婦が感染した場合や免疫力の低下した状態での感染は,重篤な症状を引き起こす.このウイルスは,度々不活化法として採用される熱処理やS/D法(solvent/detergent法)は効果がない.そこで,紫外線照射の方法を試み,高い不活化率をえた.実用化するために,石英ガラスで蛇管をつくり,そこに血液を流して,UVC(短波長紫外線)を当てる装置を作成し,実用化に向けて試験を繰り返している. 3)紫外線照射によるウイルス不活化の機序について考察した.紫外線照射により生成される核酸の生成物に対するモノクローナル抗体を用い,紫外線の照射量,傷害DNAの生成量およびウイルス不活化の程度の同時測定を行ない,これらの量によい相関があることを示した.
|