研究分担者 |
古屋 宏二 北海道立衛生研究所, 科長(研究職)
田村 正秀 北海道立衛生研究所, 所長(研究職)
藤堂 省 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60136463)
佐藤 直樹 北海道大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教授 (70205946)
伊藤 亮 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70054020)
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研究概要 |
地域連携推進研究(2)は,北海道におけるエキノコックス症に関する研究を総括する上で重要であった.特に診断に大きな問題を抱え,血清診断の精度について意見の不一致があった.そこで,北海道のエキノコックス症のルーツと考えられているサハリン州での本症の血清診断を北海道と全く同じ手法で実施した.エキノコックス抗原を別にしている道衛生研究所,旭川医大,フランスで製造販売されている3種のELISAキットがある.サハリン州住民863名より得られた血清について3つの方法で測定されたが,3つのキットの間には全く相関は認められなかった.陽性〜疑陽性を示した40例につてWB法とエコー診断を実施したが,エキノコックス症は診断されなかった.現行のELISAによる本症の第一次検診は見直されなければならない.さらに,サハリン州のキツネのエキノコックス汚染状況を調査した.冬期に捕獲されたキツネ22匹の腸管内容物に虫体,虫卵は認められなかった.北海道の本症の対策を考える上で重要な示唆が得られた. 免疫学的手段によるエキノコックス症の治療の可能性を検討するために,マウスにおけるエキノコックス二次包虫症のモデルを検索した.包虫の継代が6ケ月から12ケ月を要するため,治療実験まで実施することが出来なかったが,ヌードマウスの皮下接種による包虫の継代が可能であり,包虫シストを標的とした免疫学的治療の坪価が容易なモデルを確立した.道衛生研究所より分与された多包虫アラスカ株をコットンラット,C57BLマウス,IFN-γKOマウス,ヌードマウス,SCIDマウスの腹腔内接種と皮下接種を行った.アラスカ株には他の微生物の混在があり,病原性の弱い炭疽菌と考えられた.二次包虫症の病態を複雑にしたが,ヒトでの本症を考える上で重要な示唆が得られた.
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