土壌伝播線虫、住血吸虫の効果的な制圧方法確立に関する国際共同研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12800017
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 竹内 勤 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00051847)
• 研究分担者: 太田 伸生 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (10143611) ; 有薗 直樹 京都府立医科大学, 教授 (10079725) ; 青木 克己 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (90039925) ; 門司 和彦 長崎大学, 医療技術短大, 教授 (80166321) ; 原 隆昭 日本寄生虫予防会, 調査研究部, 部長
• キーワード: 土壌伝播線虫 / 住血吸虫 / 学校保健 / 感染制圧 / 国際寄生虫対策 / 化学療法

研究概要

土壌伝播線虫症、住血吸虫症制圧方法確立のため研究を行い、以下の成果を得た。
(1)土壌伝播線虫の治療に使用するアルベンダゾールの耐性の有無を検索する方法の確立のため細菌を使用したアッセイ系の検討を開始した。(2)プラジカンテルは日本住血吸虫症では他の住血吸虫症より副作用の発現頻度が高い。ビルハルツ住血吸虫の場合、治療効果検定は血尿と超音波画像に頼っているが、感染のintensityと相関しない。よって尿量との相関を検索したが、感染者、非感染者の間で差異はなく、自覚症状のアンケート調査が今後必要と思われた。(3)鉤虫症のモデルとしたNippostrongylus brasiliensisのラット感染系でexcretory/secretory product(ES)がT細胞のIFN-γ産生を選択的に抑制する事を見いだした。また腸管寄生虫症に見られる粘膜マスト細胞増加はαIELβ7integrin及びE-カドヘリンの発現に伴うマスト細胞の上皮内侵入による事が判明した。(4)住血吸虫感染によるTh1/Th2の変動の影響を解析し、感染によってTh1依存性の生体防御機能が低下し、Crypto-sporidiumへの感受性上昇などが見られた。しかしTh1が防御的に作用するとされるPlas-modium chabaudiに対しては逆に住血吸虫感染が虫体排除に働いた。(5)土壌伝播線虫症の診断法としてセロファン厚層塗抹法が使用されているが、この方法の迅速化のため条件の検討を開始した。(6)フィールドでの住血吸虫症の迅速診断法確立のため自覚症状と感染の有無との相関を検索した。その結果、多くの自覚症状がビルハルツ住血吸虫感染と関連しており、血尿自覚、自己診断、汚染水使用を聞き取ることによって高い頻度で感染者を特定する事ができた。(7)本年度はまずモデルとして甲府盆地のミヤイリガイ生息数の変化をより安価に、簡便なGISの導入を50cm誤差範囲内のdifferential GPSから十数m誤差のハンディーGPSで測定し、これをdigital mapと重ねあわせGISの構築を行なった。

研究成果

• [文献書誌] Urano,Z.et al: "Diotophymatid nematode larva found from human skin with creeping eruption"Journal of Parasitology. (in press). (2001)
• [文献書誌] Uchikawa,R. et al: "Suppression of gamma interferon transcription and production by nematode ES antigen during polyclonal stimulation of rat lympho node T cells"Infection and Immunity. 68-12. 6233-6239 (2000)
• [文献書誌] Tegoshi,T. et al: "E-cadherin and cadherin-associated cytoplasmic proteins are expressed in murine mast cells"Laboratory Investigation. 80-10. 1571-1581 (2000)
• [文献書誌] Nihei,N. et al: "The probable expansion of malaria infested areas in East and Southeast Asia as a result of global warming"International Health. 15-1. 3-13 (2000)
• [文献書誌] Yoshida,A. et al: "Schistosoma mansoni infection cancels the susceptibility to Plasmodium chabaudi through induction of Thl dominant circumstance in the A/J mice"International Immunology. 12-8. 1117-1125 (2000)
• [文献書誌] Maruyama,H. et al: "Protective mechanims against the intestinal nematode, Strongyloides venezuelensis, in Schistosoma janonicum infected mice"Parasite Immunology. 22-2. 279-286 (2000)