研究課題/領域番号 |
12800017
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹内 勤 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00051847)
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研究分担者 |
太田 伸生 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (10143611)
有薗 直樹 京都府立医科大学, 教授 (10079725)
青木 克己 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (90039925)
二瓶 直子 国立感染症研究所, 客員研究員
門司 和彦 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (80166321)
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キーワード | 国際寄生虫対策 / 土壌伝播線虫 / 住血吸虫 / 学校保健 / 化学療法 / 国際協力 |
研究概要 |
わが国の国際寄生虫対策の推進にかかわる基盤研究として、学校保健を通してのアプローチが可能である土壌伝播線虫と住血吸虫の制圧方法の確立について国際共同研究を行った。まず制圧におけるアルベンダゾール等の投与の基準を海外の研究協力者と共に検討し、感染率が低い場合におけるmass screening、selected chemotherapyの妥当性を認めた。しかし最も問題となるアフリカにおいては感染率は50%以上に達する事が多く、この場合はmass chemotherapyのみを行う事で一致した。またケニアにおける調査を通してプラジカンテル長期投与の安全性を確認した。しかし耐性株出現に対するモニタリングの必要性も提言した。ビルハルツ住血吸虫のコントロールのため排尿困難の軽減を指標として検索を行い、刺激性の排尿困難が流行地の学童にある事を明らかにした。また鈎虫感染モデルとしてのN.braziliensis感染についての研究では、その分泌物質ESがT細胞のIFN-γ産生を選択的に抑制し、またこの感染によって小腸絨毛上部においてカスパーゼ3の活性が亢進しており、上皮細胞の脱落が促進されている事が示された。更に小腸陰窩上皮由来の細胞株であるIEC-6を用いてこの線虫由来の物質がIEC-6の剥離、アポトーシスを亢進させる事も見い出した。住血吸虫症のワクチンの検討をも行ったが、その候補としてカルパインを同定し、ベネズエラ糞線虫に関しても腸管組織の認識、侵入機構における粘膜の硫酸化された炭水化物の重要性を明らかにした。この線虫の宿主特異性等の検討も行った。フィールドにおける土壌伝播線虫の診断の迅速化の検討では、今広範に使用されているKato-Katz法が必ずしもprevalenceのみを検定する場合は優れている訳ではなく、むしろ診断の効率を下げる場合が感染率によってはあり得る事を示した。学校保健の現況調査もケニアおよびその周辺で行い、その問題点の検討を試みた。すなわちケニアと周辺のザンジバルではビルハルツ住血吸虫の感染率は学童で10〜40%に達しており、学校保健によるアプローチが適切であると考えられたが、小学校での集団治療が過去5年間で実施されたのはケニアの対象地区で23%、ザンジバルで65%である事を見い出した。個別に治療を受けた率は更に低く、8〜40%に止まった。この結果は現地の小学校の学校保健サービスの拡充と集団治療の必要性に関する訴えに良く一致しているものと考えられた。寄生虫疾患の状況把握にはGIS/RS手法は重要であるが、実際の所WHOなどのアジア、アフリカのカバーは充分ではない。今期の研究では東南アジアにおける土壌伝播線虫のマッピングを海外の研究協力者と行い、初めてGISによる分析を可能とした。ケニアにおける検討でもRSの有効性を確認し、感染情報と地理情報の入手によりGISを導入すれば住血吸虫、土壌伝播線虫の調査が可能である事を確認し、現在作業を継続実施している。
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