研究概要 |
個体レベルにおける電磁界と生体との相互作用を理解するために、神経伝達物質である生体アミン類生合成系の上流に位置する各水酸化酵素系の補酵素として、神経伝達物質生合成量を調節していると考えられているテトラヒドロビオプテリンに着目した。5週齢のICR雄マウス5匹を1群として円回転磁界曝露をおこなった。曝露1,3,6週齢で解剖し、血漿、肝臓、腎臓、大脳、小脳を摘出した。各組織中に含まれているネオプテリン、テトラヒドロビオプテリン、総ビオプテリン、プテリンの各プテリジン量を測定し、ビオプテリンについては還元型と酸化型との比も求めた。また、血漿を除く臓器でのテトラヒドロビオプテリン生合成系に関与している酵素の各酵素活性についても測定した。同一飼育場所で磁界曝露を行なわなかった群をコントロールとしたが、漏洩磁界の影響も考えられるため、マウス飼育場から求めて処理した群をケージコントロールとして測定した値の比較を行なった。測定したすべての臓器・血漿でネオプテリンの有意な増加が磁界曝露群で認められた。個体が何らかの病気になった場合あるいはストレス状態にさらされた場合にネオプテリンの増加が認められることから、磁界曝露がマウスに対してストレスとなっている可能性が考えられる。総ビオプテリン量とテトラヒドロビオプテリン生合成系に関与している酵素の各酵素活性量については曝露群とコントロール群間で差が認められなかった。しかし、還元型ビオプテリン量が磁界曝露により減少していることが判明した。還元型ビオプテリンであるテトラヒドロビオプテリン量の減少は各神経伝達物質の量に対しても影響を与えることが考えられることから、今後はカテコールアミンやインドールアミンの含量を測定する予定である。
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