最近、パソコン等デジタル電子機器の普及と高速化に伴い、電磁波雑音環境が社会問題化し、従来より高い周波数成分を含む雑音電磁波を正確に計測可能なセンサーの必要性が増加している。本研究は、このための電界センサーを非線形高分子の広帯域光変調器と広帯域アンテナで構成しようとするものである。本変調器は、従来の無機非線形結晶を用いたものより、変調波伝送線路の構造が簡単で速度整合がとれるため、経済性に優れた電界センサーの実現が期待される。 進行波型の変調器では、光導波路中の光波と伝送線路中の変調マイクロ波が等速度で伝搬する速度整合がとれると、伝送線路の伝搬損失のみで決まる極めて広帯域な変調特性が得られる。本研究では、ジアゾ色素を側鎖とする高分子薄膜と、簡単な構造のコプレーナ型伝送線路を用いて、給電線路とのインピーダンス整合と同時に、速度整合のとれた変調器の設計を行うことができた。設計データでは、超広帯域な変調特性と、半波長電圧11.9Vという比較的低電圧な特性が得られた。 非線形高分子膜をはじめ変調器を構成する材料の特性評価を行い、紫外線照射による高分子の屈折率減少、即ちフォトプリーティングによって光導波路を作製した。さらに、その上部に伝送線路を正確に位置合わせして作製した。基板にシリコンウェーファを使用し、その劈開面を利用して導波路端面を形成した。今後、作製された光変調器の特性を評価して最適化を図り、広帯域アンテナを作製し電界センサーとしての特性を評価する予定である。
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