研究概要 |
近年,パソコンなどの電子機器の急速な普及と高速化に伴い、発生する広帯域電磁波雑音が他の電子機器に影響を及ぼし誤動作の原因となる等社会問題化している。そこで、雑音電磁波を正確に計測するための広帯域電界センサーの研究を行った。本センサーは、広帯域平面小型アンテナと、広帯域高分子光変調器から構成される。 広帯域性が期待できる小型平面ボウタイアンテナについて設計・解析を行った。その結果、平面ダイポールアンテナに比べ広帯域となり、アーム角が90°のとき最も広帯域となることが分かった。アーム角90°のボウタイアンテナの給電点の対辺を直線から円弧にすることで、さらなる広帯域性の得られることを明らかにした。 光導波路に波長分散の小さい側鎖型高分子3RDCVXYを用い、構造が簡単なコプレーナ伝送線路を用いた光変調器を設計した。高分子に紫外線を照射し屈折率を低下させてチャネル導波路を作製するために、屈折率の減少を測定し、低下した屈折率が安定であることを確認した。アンテナ給電線と伝送線路のインピーダンス整合がとれ、変調波と光波の速度整合が同時に取れる設計ができ、相互作用長2cmで変調帯域496GHzの広帯域性が得られた。 本研究で速度整合とインピーダンス整合が同時にとれる広帯域変調器が設計されたが、このような高周波帯では伝送線路の伝搬損失の実測値は、設計に用いた値よりかなり大きくなると考えられる。従って、コプレーナ伝送線路を作製し伝搬損失を測定した。現時点では、1cm当たり10dBの大きな伝搬損失となった。この場合、2cm長で30GHzの変調帯域となり、理論値よりかなり狭い帯域幅が推定される。今後、作製技術を向上し伝送損失を減少させ、変調帯域を理論値に近づけるように努める。
|